2016-08-01から1ヶ月間の記事一覧

おおやけ  (第32回)

第12条で筆の運びが停滞しています。改正草案が不気味だし、良く分からないところも少なくない。第9条でも同じようなことを書いていたが、少なくとも軍隊を作るという本音ははっきりしている。だが第12条やそれに続く幾つかの条文案は、なぜこういう変更をし…

公共ノ福祉  (第31回)

今日は、少し堅苦しい話になりそうですが、でも折角の機会。もう二度と「公共の福祉」なるものを、こうまで話題にすることはないと思うので、調べ事の結果や感想を書き残します。前回において、憲法第12条と、民法第1条がけっこう似ているという話題に触れま…

民法について  (第30回)

第12条は話題が多いので、複数回に分けて考えます。先ずは例によって、現行憲法と改正草案を並べてみる。 【現行憲法】第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用…

基本的人権の享有  (第29回)

憲法第三章の「国民の権利及び義務」は、その前の天皇や戦争の放棄の章と比べ、われわれの暮らしに直接かかわる度合いが大きいと書いた。勿論そうなのだが、ではスラスラ読めるかというと、知っているつもりでよく知らない言葉が出てくるし、改正草案が書き…

第三章は一難去ってまた一難  (第28回)

先ずは今の知識だけで憲法を読んでみようと始めたものの、ずいぶん時間と労力をかけたのに、まだ二章九条。早くも弱音が出ております。想像以上に長引いているのは、外的な要因もある。第1章を終えた途端に、天皇陛下の譲位のお話しが出た。 そして第2章はち…

アイゼンハワーの大統領退任演説  (第27回)

しばらく前に話題にしたケネディ大統領就任演説の三日前、前任者のアイセンハワー大統領が退任演説を行っている。彼はノルマンディ大作戦の英雄で、つまり日本を攻めたメンバーには入っていなかったからか、うちの田舎程度だとニミッツやマッカーサーは駄目…

忙しくならないか、国防軍  (第26回)

改正草案の第9条の二(国防軍)は、5項まである。草案の全部をチェックはしていないが、項の数が一番、多いかもしれない。日本国憲法は百以上も条があって、条項が多すぎるという意見を耳にしたことがあるが、改正草案は更に新設の条項を積み重ねている。で…

その名は国防軍  (第25回)

小欄も時には無駄話でも挟まないと、息が詰まって続けられない。現時点では、憲法を精いっぱい解釈しても、自衛権は「必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと」になっている。これは、先日、防衛省・自衛隊のサイトから引用したが、申すまでもなく「必要…

第2項を放棄しますか  (第24回)

今次改憲の議論において、おそらく緊急事態条項と並んで最大の論点となるのが、第9条第2項だろう。最新の改正草案における同項は、修正とか調整とかいうレベルではない。全文「総とっかえ」なのだ。 現行憲法の平和主義をそのまま死守する立場の方々からすれ…

第9条第1項の改正案は本当にこの理解で良いか  (第23回)

ようやく9条関係の下準備が一段落したので、自民党の憲法改正草案の第9条第1項と、現行憲法の条文を比べてみます。ブログのタイトルどおり、自信が無いので、今回は全体的に自問自答になっている。まずは、そのまま並べてみます。 【現行憲法】第二章 戦争の…

戦後レジームとポツダム宣言 【後半】  (第22回)

前回の続きです。ポツダム宣言の第10条は、前半に日本国民を奴隷にしたり、国民国家を破滅させたりはしないと書いており、亡国だけは避けられそうであった。国体は護持されたとしても、後半で戦争犯罪人は容赦しないと書いてある。意地悪く勘ぐれば、ポツダ…

戦後レジームとポツダム宣言 【前半】  (第21回)

現総理(2016年8月現在)の主張する「戦後レジームからの脱却」がどれほど重要なのか、そもそも戦後レジームという聞きなれない言葉の意味するところは何なのか。こういう総論的なことは、もう少し早めに考えを整理しておいたほうが良かったのだろうが、今さ…

自衛権とは何でしょう  (第20回)

自分の身を自分で守る権利があるのは、個人でも組織でも変わらない。されど、実際に揉め事があったときは、それが自衛に当たるのかどうかについて、時間の余裕と必要性があれば事前に判断しなければならないし、事後には裁判等で問題になる。個人で言えば刑…

安全保障のために  (第19回)

改正草案の第9条に進む。ここで政治的な議論はしないと申し上げて始めたものの、自分がどう思おうが、第9条に関連する何らかの意見を述べれば、この国では自動的に必然的に、政治的言動とみなされるだろう。 私はいわゆる無党派層に分類される人間であるはず…

世襲で男系で生涯現役  (第18回)

世襲で男系で生涯現役というのが、憲法と皇室典範に定められた現時点での天皇および皇室の「制度」である。皇族といえど家族であることに変わりは無く、制度という言葉も使いにくいのだが、みんながそう言うので、法制度という側面だけをみるときには、これ…

象徴としての務め  (第17回)

本日(2016年8月8日)、天皇陛下のお言葉がビデオで放映されました。もっと、しっかり考えてから記事を書くべきかとも思いましたが、直後の感想というものも記録に残しておけば、いつか何かの役に立つかもしれないと、儚い望みなど託して書きます。資料は宮…

新憲法のプリンシプル  (第16回)

拙宅にある「白洲次郎 占領を背負った男」(北康利著、講談社)という書籍を読むと、白洲さんは「プリンシプル」という英単語が好きだったようだ。私は中等教育でこの単語を習ったが、なかなかカタカナ英語として定着しないようである。 原理原則、主義信条…

現行の第9条第2項  (第15回)

第9条は、これをこのまま永久保存したいという立場の方々からすれば、至ってシンプルに読めるだろう。細かいこと抜きで重要な点を拾えば、章名が[「戦争の放棄」、第一項には戦争も武力行使も永遠に放棄すると念押しがあり、第二項に戦力は持たず、国の交戦…

現行の第9条第1項  (第14回)

昨日(2016年8月3日)、我が国で軍事志向の強い政権が新内閣を発足させた途端、軍事行動が好きな北朝鮮が、ミサイルを飛ばしてきた。よもや偶然ではあるまい。あの方向音痴のミサイル、どこを狙ったか分かりはしない。これでもまだ自衛権の発動に至らないと…

インディアナポリス  (第13回)

映画「ジョーズ」の一場面に、サメ漁が専門の漁師ロバート・ショウの船長と、鮫の生態研究者であるリチャード・ドレイファスの海洋学者が、夜を迎えた船の中で、お互いが鮫に噛まれた傷跡を見せあうシーンがある。それまで反目し合っていた二人が、これを機…