2016-11-01から1ヶ月間の記事一覧

環境権などの新しい人権  (第72回)

掲題は、先般始まった参議院の憲法審査会でも出た言葉です。それほど新しいわけではなく、憲法を骨董品扱いにする人たちには新しいのかもしれないが、前からある概念である。何回か言及してきた当家にある本、「図説でわかる憲法問題」にも、プライバシー権…

新三役  (第71回)

第25条のあとに、改正草案は三つの新設条項を加えております。もともとは、今の憲法だけ読むつもりで始めたのだが、どうにも政局に勉強をせかされており、改正草案もちゃんと目を通しておかなくてはいけない。まずは、現憲法の第25条を再掲する。 【現行憲法…

三島の檄  (第70回)

明日は11月25日。1970年のこの日、三島由紀夫が自衛隊の建物の中で割腹自殺した。当時の私は10歳であったが、実家は朝の7時と夕方の7時に、一家でテレビのニュースをみるのを日課としていたため、この騒動のことを子供だったにしてはよく覚えている。もちろ…

うまい話には裏がある  (第69回)

前回の第25条第2項の続きです。今日は題に「うまい話には裏がある」と書いた。国は少なくとも努力をしてはくれるらしいが、段々と冷たくなってきているのは、年金や介護保険に詳しい方はよくご存じのことと思う。それよりも当方と致しましては、現在、不気味…

無い袖は振れない  (第68回)

本日は第25条の第2項。第1項で、国民が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有していることが明言された。権利は、行使してはじめて、その効力を発揮する。行動を起こさなければ宝の持ち腐れ。選挙権も、幸福追求権も、裁判の権利もみんなそうだ。しか…

健康で文化的な  (第67回)

前回は憲法にケチをつけているかのようで、自分で始めておきながら、あまり愉快ではないが、まだ続きがある。「健康で文化的な生活」とは何か。この「生活」をプライベート・ライフと取ってしまうと、仕事を終えても、ほんの少し楽しむくらいの権利があれば…

憲法は第25条だ  (第66回)

もう10年くらい前、司法試験の合格を目指して勉強中の方が、意見交換の席上で、「憲法で一番大事な条文は第9条ではなく、天皇制でも政教分離でもなく、第25条だ。」と力説してみえたのを覚えている。それまで、第25条になんて書いてあるか知らなかった私にと…

第111位から更に下がる可能性  (第65回)

ようやく第24条の検討も、最後の回を迎えている。本日は現行第24条第2項と、改正草案の同第3項の比較。 【現行憲法】配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等…

のみ  (第64回)

第24条では、改正草案の新案第1項に、ずいぶん時間をかけた。今回は以下引用する現憲法の第24条第1項と、改正草案の第2項を比べる。私の知る限り、一般人まで巻き込んで憲法のみならず、法令の話題でただ一言がここまで反響を呼んでいるケースというのも、こ…

情けは人のためならず  (第63回)

第24条の話題はまだ尽きていない。今日は第25条も関連する。まもなく出てくる国民の三大義務は、いずれも「国民は○○の義務を負ふ」という表現になっている。憲法の本質的性格からして、国民が国民に義務を負わせていることになっており、以前、私はこれを、…

そもそも家族とは何だ  【後半】  (第62回)

先回のつづき。その「family」が、ほかならぬ現憲法の素案になった「GHQ草案」(マッカーサー素案)の第23条に出てくる。これは現憲法の第24条の土台になったものだ。数字が一つずれているのは、現憲法の第3条と第4条に相当する条文がGHQ草案では一つの条だ…

そもそも家族とは何だ  【前半】  (第61回)

前々回に第24条の前半を取り上げたので、今回はその後半。「家族は、互いに助け合わなければならない」。 さすがの改正草案も、前文でこの憲法は日本国民が制定すると書いているので、第24条後半も形式上は、日本国民が日本の家族に向かって命令している規定…

まずは前文から再出発  (第60回)

再出発する理由は、改正草案の前文に、今の憲法にはない「家族」という言葉が入って来たからだ。国のサイトで憲法をみる。elaws.e-gov.go.jp 最後に「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」とあるように…

今日は検索屋  (第59条)

インターネットの最大の便利さは、検索機能だろう。紙情報のみだった時代は、どこを探せばわからないとか、そもそも、どう探したらいいのか分からないことが多々あり、それがために探しものを諦めたこと数知れず。今は適当に言葉を選んで検索するだけで、玉…

シロタさんとシラスさん  (第58回)

なるべく他の人の意見に左右されないよう、独学を優先すると書いて始めたブログだが、新聞や雑誌を読んだりインターネットで検索をしたりしていると、このご時世、憲法改正に関する記事が多く、こちらも意志が弱いのでつい覗いてしまう。 ネットの例を挙げる…

権利についてのおさらい  【後半】  (第57回) 

前回の続き。そして同書では、ここからが私にとってはありがたい情報である。この本によると、(1)日本国憲法では、「基本的人権」という言葉を使うとき、天賦の人権を意味した。(2)「自由および権利」というときは、後国家的人権を含む、広義の人権と…

権利についてのおさらい  【前半】  (第56回)

国民の権利と義務について悪戦苦闘中です。二三回前に、住居や経済の件で熱くなってしまったので、ここで少しクール・ダウンを兼ねつつ、分かったようで分からないまま過ごしてしまった基本的人権のことも含めて、第三章の冒頭部分を復習する。いまの憲法に…

学問のすゝめ  【後半】  (第55回)

前回の続き。さて先週は、「公益」と「公共の秩序」についての私見を述べたが、一方で、改憲勢力が必死に抹殺しようとしている「公共の福祉」については、さすが福の字をその名に負う男、福沢先生のご威光を借りることとし、「学問のすゝめ」の文中にぴった…

学問のすゝめ  【前半】  (第54回)

第23条は、いまの憲法も改正草案も、仮名遣い以外は同じ。 第二十三条 学問の自由は、これを保障する。 学問とくれば、福沢諭吉であろう。「学問のすゝめ」は明治初期のベストセラーで、もちろん明治憲法よりも帝国議会よりも先輩である。今回も青空文庫さん…

職業選択の自由は守られているか  【後半】  (第53回)

前回の続きです。自民党やその取り巻きが「新自由主義」とやらを標榜していた時期は、日本の社会経済の一大変革期であったろう。振り返れば失われた十年が、もう十年、再延長された時期にも当たる。別の機会に述べることになるが、家族が壊れた。 特に都市部…