2016-01-01から1年間の記事一覧

情けは人のためならず  (第63回)

第24条の話題はまだ尽きていない。今日は第25条も関連する。まもなく出てくる国民の三大義務は、いずれも「国民は○○の義務を負ふ」という表現になっている。憲法の本質的性格からして、国民が国民に義務を負わせていることになっており、以前、私はこれを、…

そもそも家族とは何だ  【後半】  (第62回)

先回のつづき。その「family」が、ほかならぬ現憲法の素案になった「GHQ草案」(マッカーサー素案)の第23条に出てくる。これは現憲法の第24条の土台になったものだ。数字が一つずれているのは、現憲法の第3条と第4条に相当する条文がGHQ草案では一つの条だ…

そもそも家族とは何だ  【前半】  (第61回)

前々回に第24条の前半を取り上げたので、今回はその後半。「家族は、互いに助け合わなければならない」。 さすがの改正草案も、前文でこの憲法は日本国民が制定すると書いているので、第24条後半も形式上は、日本国民が日本の家族に向かって命令している規定…

まずは前文から再出発  (第60回)

再出発する理由は、改正草案の前文に、今の憲法にはない「家族」という言葉が入って来たからだ。国のサイトで憲法をみる。elaws.e-gov.go.jp 最後に「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」とあるように…

今日は検索屋  (第59条)

インターネットの最大の便利さは、検索機能だろう。紙情報のみだった時代は、どこを探せばわからないとか、そもそも、どう探したらいいのか分からないことが多々あり、それがために探しものを諦めたこと数知れず。今は適当に言葉を選んで検索するだけで、玉…

シロタさんとシラスさん  (第58回)

なるべく他の人の意見に左右されないよう、独学を優先すると書いて始めたブログだが、新聞や雑誌を読んだりインターネットで検索をしたりしていると、このご時世、憲法改正に関する記事が多く、こちらも意志が弱いのでつい覗いてしまう。 ネットの例を挙げる…

権利についてのおさらい  【後半】  (第57回) 

前回の続き。そして同書では、ここからが私にとってはありがたい情報である。この本によると、(1)日本国憲法では、「基本的人権」という言葉を使うとき、天賦の人権を意味した。(2)「自由および権利」というときは、後国家的人権を含む、広義の人権と…

権利についてのおさらい  【前半】  (第56回)

国民の権利と義務について悪戦苦闘中です。二三回前に、住居や経済の件で熱くなってしまったので、ここで少しクール・ダウンを兼ねつつ、分かったようで分からないまま過ごしてしまった基本的人権のことも含めて、第三章の冒頭部分を復習する。いまの憲法に…

学問のすゝめ  【後半】  (第55回)

前回の続き。さて先週は、「公益」と「公共の秩序」についての私見を述べたが、一方で、改憲勢力が必死に抹殺しようとしている「公共の福祉」については、さすが福の字をその名に負う男、福沢先生のご威光を借りることとし、「学問のすゝめ」の文中にぴった…

学問のすゝめ  【前半】  (第54回)

第23条は、いまの憲法も改正草案も、仮名遣い以外は同じ。 第二十三条 学問の自由は、これを保障する。 学問とくれば、福沢諭吉であろう。「学問のすゝめ」は明治初期のベストセラーで、もちろん明治憲法よりも帝国議会よりも先輩である。今回も青空文庫さん…

職業選択の自由は守られているか  【後半】  (第53回)

前回の続きです。自民党やその取り巻きが「新自由主義」とやらを標榜していた時期は、日本の社会経済の一大変革期であったろう。振り返れば失われた十年が、もう十年、再延長された時期にも当たる。別の機会に述べることになるが、家族が壊れた。 特に都市部…

職業選択の自由は守られているか  【前半】  (第52回)

大学で経済学を専攻したし、そのあと営利企業で働いたから、報道でもネットでも政治の話題より、マクロ経済のほうに目が行くことが多い。今回は珍しく、憲法談義でありつつも、経済領域がテーマとなる。予めお断りしておきます。リニア新幹線を痛罵するので…

十月の出来事  (第51回)

10月20日に皇后陛下は、82歳の誕生日をお迎えになられた。遅くなりましたが、おめでとうございます。その後、「宮内庁の質問に対する文書ご回答」が公表され、今も宮内庁のウェブ・サイトに掲載されている。書き終えられたのは13日だったそうで、タイ国の故…

どこに住んでも良いのかどうか  (第50回)

第22条は、住まいと職業の自由に関する規定である。条文中の「移転」を広くとらえて、「移動の自由」と主張する人も少なくないようだが、種本の英文版を重視する限り、はっきりと住まいの変更と書かれているので、国語の教科書的には拡大解釈である。もちろ…

表現しない自由 邪魔する自由  (第49回)

今日は、次回に引き続いて、改正草案の第21条第2項を話題にする。血圧はまだ大丈夫で、しかも収まりがついていない。同項を再掲するが、念のため、新設の項であり、いまの憲法には無い。全く無い。 第二十一条 二 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序…

公益及び公の秩序  (第48回)

今回は第21条。前回、私は無意識に「言論の自由」と書いたのだが、以下のとおり、この条文で定めている事柄の総体を表す概念は、よく耳にする言論の自由だけではなくて、正確には「表現の自由」だ。この条項も、複数回の勉強を要することになろう。では、い…

この道はいつか来た道  (第47回)

第20条に時間をかけている。ようやく最後の第3項にたどり着いた。これがまた追加変更が多くて、手ごわそうである。そういえば先日の報道で、この2012年の改正草案も、あまりに評判が悪いと判断したのか、一部の改編を予定しているというような記事を読んだ。…

祈りの声 蹄の音 歌うようなざわめき (第46回)

今週は柄にもなく忙しいため、今回は簡略に参ります。第20条の第2項。強制禁止を強調する異色の定めだ。この条項は、改正草案において変更点がないため、何が書いてあるかだけ確かめる。条文は次のとおり。第3項は次回に読むので、今日は略します。第二十条 …

神社合祀に関する意見  (第45回)

本は印刷物に限る。紙とインクの匂いは不可欠だ。というふうに、いろんな人に主張し、いろんなところに書いてきた。しかし、次の情けない理由二つにより、あっさり寝返った。一つは拙宅の書棚が本でいっぱいになり、置き場所がなくなったこと。もう一つは老…

宗教団体に政治上の権力を行使させたい場合  (第44回)

万一、ここに直接あるいは途中からお越しいただいた方々がいらしたならばお伝え申し上げます。ブログの最初に書きましたが、私は法律家ではないし、政治家でもないし、憲法の本やサイトも殆ど全く読んでいません。まずは誰の意見にも左右されることなく独学…

五重塔  (第43回)

臨時国会が始まった。与党は最新の改正草案を撤回するつもりはないと、幹事長が仰っている。まだ読んでいる途中の私としては、今ここで「やっぱし、やめた」と言われるのも困るが、このままの案で自信があると言われても困る。困った国、日本。 ところで憲法…

政教分離のこと  (第42回)

政教分離は、難しい。三権分立や平和主義や基本的人権といった日本国憲法の主たる理想・概念は、その憲法の下で生まれ育った者にとって、長年のお付き合いからくる実感として「無いよりも、有った方が、ずっと良い」ものだし、多くの国家において、共有され…

苦手な宗教のはなし  (第41回)

次なる第20条は、政教分離の定めとして知られているが、私には第9条に負けず劣らず扱いにくい条項だ。戦争の経験もないが、特定の宗教の信者になったこともないので、そもそも宗教というものの大切さ有難さというのが実感できない。 憲法に信教(この意味す…

個人情報アレルギー  (第40回)

今の日本人は、自らの個人情報やプライバシーの伝達・開示に過敏であると思う。確かにニュースをみていると、一向に衰える気配のない振り込め詐欺被害の報道や、大量の顧客情報が流出したとか、DV夫に間違って妻の住所が伝わってしまったとか、ストーカーな…

霧雨の千鳥ヶ淵  (第39回)

今回は、いつもの逐条の進め方から外れて、少し前に戻る。第13条について補足したくなった。例の「人として」に拘ったのはいいが、他の大事なことを言い忘れていた。そこに思い至ったきっかけの出来事から書きます。先日、千鳥ヶ淵の戦没者墓苑に行ってきた…

心の自由  (第38回)

私の愛読書の一つに、今は亡き神谷美恵子さん著「こころの旅」がある。神谷さんは精神科医であり、大学教授でもあったお方で、かつて皇后陛下が一時期ご不調の折(報道では確か失語症)、御相談役として任命されたほか、哲学書の翻訳などもなさった碩学であ…

自由なんて、本当の自由でないのなら、何も失うものがないのと同じこと  (第37回)

懸案の「改正草案」の第18条は、本当に同草案が現行の憲法を「改正」する意図があるのかどうか、疑わしく思えてしまうような内容だと感じる。まずは、久しぶりに改正草案のサイトを再掲しよう。お変わりなく、恙無きや云々。最後に関係者一同(推進本部や起…

公僕  (第36回)

頼まれもせずブログを書きながら、「疲れて来た」とぼやいている間抜けな私である。憲法の初歩的な勉強をしようという初心、および、そのために選んだ、現在の憲法と、たまたま見つけた自民党の最新改正案を比較検討するという手法は、適切なものであったと…

国会議員は公務員か  (第35回)

という疑問をふと持ったので、取りあえずインターネットで検索してみたら、現時点でこういう記事が出てくる。「憲法上は、国会議員も「公務員」であるといっても間違いないでしょう。しかし、常にそのように解釈されるというわけではありません。」と書いて…

法の下なら平等  (第34回)

お盆の季節に余力があったこともあり、本サイトはぶっ続けに更新し続けて来たのだが、だんだん忙しくなってきたので少しペースダウンしてきました。やる気が失せたわけではない。ここで、ちょっとここまでの検討を振り返ってみる。 いま憲法を改正しなくては…