前文をもう一度 (第200回)

 このブログでは、最初のうち憲法の基礎を勉強するという目的で、日本国憲法自由民主党の「日本国憲法改正草案」を逐条で読む努力をして参りました。第200回も迎えたことだし、ここでもう一度、これから何回かかけて憲法の前文を読むことにしました。

 今年(2019年)は、選挙の年と呼ばれているほど国政・地方あわせて選挙が多いようですが、やはり注目は参議院選挙です。7月ごろだろうという報道が多いですから、今からあと半年後ぐらいに迫っています。参院は解散がありませんから、中長期的な影響が大きいことは以前も述べました。


 憲法改正の動向について、おさらいをすると、野党時代の自民党が2012年に公表した上記の日本国憲法改正草案(以下、「改正草案」と略称します)が出て、そのあとの政権交代後、三年前の2016年7月に、前回の参議院選挙がありました。当時の改憲勢力とみなされている議席数が、三分の二を超えました。

 このときの例の池上彰さんのインタビューで、首相はすでに谷垣総裁時代に「全てお示ししている」憲法改正案に触れ、「前文から全てを含めてですね、これを改正したいと思っています」と明言しました。選挙公約であるとも述べています。当時の記事や動画が今も残っています。「全て」の意味も、追って考えます。


 そのあとは、去年3月の党大会で合意したらしい4項目に絞った改正案も出ていますが、どちらで国会の発議をするのか、私が知る限り明確ではありません。もしかしたらこのいずれでもなく、新しいものが出てくるかもしれません。おそらく、参院選が終わってから、キナ臭い話題はその後に、議席配分も踏まえて協議するのでしょう。

 ただし、最近物覚えに難が出て来た私が、忘れないでおきたいのは、前文を含め全て改正するという選挙公約や報道に関し、それを撤回するという話は耳にしておりません。また、依然として改正草案は同党のサイト(正確には党の本サイトではなく、なぜか「憲法改正推進本部」という別のサイト)で公表されています。


 したがって、最初の発議なり、仮にその前に素案なりが出てくるとしても、それが最終目標と思わない方がよく、現時点では、この改正草案が到達目的であると位置づけます。そうしないと国民投票の可能性もあるのに準備もできない。

 まずは前文からと申したのは、首相の発言に出てくるばかりでなく、前回ここで話題にしたとき(もう二年ぐらい前だろうか)、あまり熟慮した記憶がありません。なんせ勉強し始めたばかりでしたので、検討材料も少なかった。そこで前回の記事は読み直さず、いまの時点でどう考えるかを改めて書き加えます。


 すでに、ネットをみていると、みなさん相当、比較検討の作業や発言をしており、どちらに寄るかは問わず、活発な論争になりそうで期待も膨らみます。結党以来の悲願であり、選挙公約に挙げた以上、失敗したら解党する覚悟でしょうね。

 今回は先ず、これから利用するであろう資料の一覧を作ることにしました。英語版も検討したいので、何点かのウェブ・サイトを使って考えます。まず、御年七十を超えた日本国憲法の全文(日本語)は、衆議院のサイトになるものを参照します。同じページの左上から、国会法にも跳べますので便利です。

日本国憲法(日本語): 

www.shugiin.go.jp


 次に先述の自由民主党による日本国憲法改正草案です。
②改正草案: 

constitution.jimin.jp

 なお、このサイトの上に並ぶアイコンからは、「改正草案Q&A」(増補版)を読むこともできます。
③改正草案Q&A

constitution.jimin.jp


 最後に前記のように、英語版も参照したいので、これは「日本法令外国語訳データベース」(正文ではないが、政府のサイトにある参考文献)を見ます。
④英語版仮訳

www.japaneselawtranslation.go.jp


 このサイトは日英の両文が並んでいて、比べやすくなっています。確かに日本国憲法は翻訳調(特に前文がそう)なのですが、私はかつて五年近く米国に駐在し、その後も英語を使う機会が多くて、会話や作文はさっぱりですが、読むのはそれほど抵抗がありません。


 今回は最後に、日英比較で私には役に立った箇所をお伝えします。前文の最後は、この一文です。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

 このうち、私には後半に出てくる「この」という代名詞が何を指すのか今一つ不明確だったのですが、英語版仮訳では「these」と複数形になっています。このため、この文の「これ」とは、そのまえに出てくる前文に書かれているもの全て、という理解で臨むことにしました。

 それを踏まえて続きを読めば、「崇高な理想と目的」を、「達成することを誓う」ですから、憲法前文は「理想と目的」です。理想も目的も将来に向けて設定するものであります。今は未だ実現していないか、不安定であるものです。その達成を日本国民が「誓う」と宣言しているのが、前文の存在意義ということになります。




(つづく)






 
わが家の梅は鉢植えなので、ささやかに遅れて咲きます。
(0219年2月21日撮影)







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