万機公論ニ決スヘシ  (第107回)

 憲法の第42条は次のとおり、二院制の規定。改正草案も同じ文。

第四十二条 国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。


 私が子供のころから、参議院の不要論というのがあった。政治家も有権者も、タレント議員を量産しておいて、よくもまあ。半世紀が経過したが、最近はむしろ言われなくなったような気がするがどうでしょう。

 不要論は、単に国会議員の失業対策に反対するものだけではなく、結局、衆議院と同じ結論ではないかという自民党長期政権の副作用に対し、税金と審議時間の無駄遣いを責める論調だったように思う。


 その長期政権も、周知のとおりでここ何年か、右往左往して危うい。また、憲法の後のほうに出てくるが、任期4年と明記されている衆議院を好きな時に解散してよいという悪弊を創り上げてしまったものだから、総選挙が終わるまで参議院がないと困るのだ。

 本来は別の人たちが、別の場で議論する点にこそ、二院制の利点である政治の安定や継続が期待されている。アメリカでは戦後、大統領、上院、下院の三者を一つの政党が占めた期間は殆ど無い。それが我が国では「ねじれ国会」と呼んで、与党も報道も大騒ぎ。


 アメリカといえば相変わらずトランプさん騒動が収束しないが、それでもたまには評価もしたくなる点は、公約通りに行動していることだ。これが新鮮に感じられること自体、日本では西洋原産の民主主義がよほど合わないのではないかと心配になる。

 ついでに、総理を侮辱したという理由で証人喚問が急転直下、行われた。この理由で国会から招待状が来るなら、次は私の番ではないかとも思った。言いたいことはたくさんある。でも事実誤認だけでさえ偽証罪になるなら嫌だ。

 ソ連時代の古い小話である。赤の広場で「ブレジネフは大馬鹿野郎だ」と叫んだ男が現行犯逮捕された。本当のことを言って何が悪いと警官にたてついたところ、お巡りさんいわく「国家機密漏えい罪だ」。うん、罪刑法定主義


 長生きしてほしかった政治家の一人に、石橋湛山がいる。次の言葉は、石橋湛山記念財団のSNSから拝借申し上げます。リンク切れがあり得るので、転機します。


 「政治家にはいろいろなタイプの人がいるが、最もつまらないタイプは自分の考えを持たない政治家だ。金を集めるのが上手で、また大勢の子分をかかえているというだけで、有力な政治家となっている人が多いが、これは本当の政治家とは言えない。」
 

 教育勅語には、いいところもあるから尊重すべきだと私の同世代の人たちなど(例えば首相夫人とか防衛大臣とか)が言ってみえるらしいが、「たまには、まともなことを言う」くらい、このブログだってやる。

 それに、今の若者は、どうこう言わなくても十分、友達を大切にするし親孝行だし、むしろ、それを大事にし過ぎて当人たちが困っているような気がする。だから、黙ろう、老眼世代は。あの勅語は、「お上のいうことをきけ」と言っているだけだ。


 件の教育勅語学園は、夏休みの宿題に「五箇条の御誓文」を、幼稚園児に暗記させていたというニュースを見たが本当ですか。自分たちでは指導できないので、親にやらせたのか。しかし、あれはむしろ、今の日本では「上下」の「上」や、「官武」が心した方が良いのではないか。

 そもそも、当時だってそういう趣旨だったはずで、もう旧来の身分制度は廃棄処分にするという宣言であり、このため「庶民」まで戦争に駆り出されることになったが大惨事を招き、ようやく日本はそこに「待った」をかけて、そのあと頑張って来たんじゃないか。

 十歳ごろだったか、今回のタイトルに借用した擬古文の表現、「万機公論ニ決スヘシ」というのを歴史の図鑑か教科書で読み、なるほど、これで国会というところは、みんなして好き放題、叫んでいるのかと納得したものです。


 それでよい。今のルールは国民全員が、教育勅語的に同意見になる必要はなく、多数決だけで決めるものでもない。かつての婦人公論が体現していたとおり、立場が違えば意見も異なり、黙っているよりは智恵を寄せ集めた方がよい。

 だから、閣議のような密室同然の寄り合いで、しかも半数までは国会議員でなくてもよいという最高機関ではないところで、憲法の解釈なんてしてはダメだろう。その判断結果が、どれだけポリティカリー・コレクトであっても、権限がないという意味において学生のディベートと変わりはしない。


 最後に、三権の出番は憲法で「立法・行政・司法」になっており、皇室典範でも順序は同じばかりか、「皇室会議」の人数の配分も異なる。私も今、誰が正副議長なのが知らないという恥ずかしい有り様だが、いざというときは重責なのだ。再度、引用します。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO003.html

皇室典範 第二十八条  皇室会議は、議員十人でこれを組織する。
2 議員は、皇族二人、衆議院及び参議院の議長及び副議長、内閣総理大臣宮内庁の長並びに最高裁判所の長たる裁判官及びその他の裁判官一人を以て、これに充てる。




(おわり)




近所の善性寺にて。
石橋湛山の墓がある。

(2017年3月29日撮影)






















































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